一般的になっているのは、陸側のプレートと海側のプレートの境界で発生する「プレート間地震」、内陸で発生する「内陸地殻内地震」でしょう。このうち前者の方は、巨大地震が発生すると、場合によってはあるもう一つの巨大地震を誘発する危険があるのです。
それがアウターライズで発生する地震なのですが、今回はその地震について解説します。
アウターライズ地震


「アウターライズ」とは、ざっくりというと海側のプレートが沈み込む手前の隆起した地形のことです。
海側のプレートは陸側のプレートの下に沈み込んでいるのですが、海側のプレートが沈み込むためには沈み込む手前で折れ曲がる必要があります。その時少し隆起したような地形が作り出されるのです。その場所を「アウターライズ」と呼んでいます(海溝の外側(outer)、隆起部分(rise)という意味で、「海溝外縁隆起帯」と呼ぶ)。
そして、そこで起きる地震を「アウターライズ地震」と呼びます。
海溝の外側付近では、正断層の活動によって海溝軸にほぼ平行に凸凹(でこぼこ)した構造が発達していて、アウターライズ地震の多くはこの場所で発生しています。断層は海底の地形図にも映しだされるほどですので、発生すると震源が浅いゆえ、大津波を発生させるのも頷けます。
ただ、領域によっては横ずれで発生する例外もあり、未知の部分も多くあります。実際に2012年に発生したスマトラ島沖地震は正断層ではなく、横ずれ断層で発生したと推定されています。
この地震の特徴は、「揺れが強い=津波が来る」は通用しないという点です。アウターライズ地震は、陸からかなり離れた場所で発生する地震のため、大きくても震度5程度だと思われます。特に知らない人は、「今回は揺れが小さいから津波の心配はない」などと独自の考えで避難しない者も出てきて、結果的に津波に巻き込まれてしまう者も出てくる可能性があります。なので、地震情報で震源がかなり沖合で巨大地震が発生した場合には、気象庁が出す津波情報にも従うようにしてください。
また、横ずれの場合は高い津波を発生させにくいのですが、それでも1m程度の津波は発生した記録が残っていますので、注意が必要です。
過去のアウターライズ地震
過去に発生したアウターライズで発生したものとされる巨大地震は、何度か記録されています。
最近の巨大地震の履歴からも、以下のようにプレートの境界で発生する巨大地震とアウターライズで発生する巨大地震は、セットで発生していて、比較的短い期間では数か月で、最長だと数十年という期間を空けてから発生していることも分かっています。
中でも昭和三陸地震は、遡上高28.7mにも達し、死者・行方不明者は3064人となる甚大な被害が生じました。
また、最近の巨大地震では前震が観測されていた地震もあり、2012年スマトラ島沖地震では、本震発生3か月ほど前にM7.2の大地震が発生していて、その後にもM4以上の顕著に活発化していたことが記録されています(USGSの地震情報データ)。
